演奏曲目紹介④♪

「ショパン 幻想ポロネーズ 変イ長調 作品61」


ショパンは生涯を通じてポロネーズ(ポーランドが起源の3拍子のやや男性的な性格の舞曲)を書いていて、生前に出版されたピアノ独奏曲の作品番号付きの作品は7曲ある。本日演奏する幻想ポロネーズの正しい曲名の表記は、「ポロネーズ=幻想曲」である。ショパンも作曲した当初から曲名を決めかねており、ポロネーズの舞曲性というよりもむしろ幻想曲として捉えた方がしっくりくると考えていたのではないだろうか。1845-1846年の18ヶ月もの時間を費やして完成したこの曲は、ヴェイレ夫人に献呈された。


リストは、「この痛ましい幻影は芸術の域を超えている」「この曲の中に大胆で華麗な描写を探し求めても無駄である。もはやこの世には勝利を誇る騎士の高らかな足音は聞かれない。これらの調べに代わって、この曲はいたるところ突然の変動に傷つけられた深い憂愁や、急な驚きに乱された平安や、忍びやかな嘆きで彩られている」と評している。ショパンの死後にショパンについての論文を書く程、尊敬し、一目を置いていた大音楽家のリストでさえ、当時正確に理解することができないほど革新的な作品であったのだ。厳格な形式を持たず、あたかも即興演奏のように、多種多様な音楽的要素が現れ、次にどんな音楽が生み出されるのか予測することができない。だが、各部分は入念に結びつけられており、いつの間にか大きな音楽の渦に飲み込んでいく緻密で、自由で、壮大な作りは見事としか言いようがない。間違いなくこのポロネーズ=幻想曲は、ショパンの最高傑作の一つである。

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