演奏曲目紹介③♪
「ショパン 舟歌 嬰へ長調 作品60」
舟歌(ヴェネツィアのゴンドラ漕ぎの歌に由来すると言われている)は1845-1846年にかけて作曲され、シュトックハウゼン男爵夫人に献呈された。ショパンの舟歌は、他の作曲家が作ったような抒情的な音楽というよりはむしろ、スケルツォやバラードと同種の疑似ソナタ形式による物語的な音楽であると言える。しかし、この舟歌が形式張って硬直した音楽に聴こえないのは、経過部分の巧みさにある。わずか数小節で聴き手の耳を捉え、音楽の雰囲気をがらりと変化させてしまう。全体を通して水のように淀みなく自然に流れ、発展し、あたかも抒情的に聞こえるのである。舟歌は、物語性と抒情性とを見事に融合させたショパンの最高傑作の一つと言えるであろう。
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